瀟湘八景に寄せて

瀟湘八景に想いをはせたお茶会を開きました。

「鉄 瀟湘八景 八角風炉・浜松地紋 富士釜」こちらの風炉に描かれている

のが瀟湘八景です。

今回はそれにちなんだお道具や書画を集めてみました。

瀟湘八景とは、中国の山水画の伝統的な画題となっています。

またその八つの名所のことを指します。

瀟湘は湖南省長沙一帯の地域。洞庭湖流入する瀟水と湘江の合流するあたりを瀟湘といい、古より風光明媚な水郷地帯として知られています。

北宋時代の高級官僚・宋迪はこの地に赴任した際に、

この景色を山水図として描いています。

どっしりとした八角風炉とその上の富士釜にも、松原の景が描かれています。

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瀟湘八景 八角 鐵風炉

 

本床には 大綱 宗彦(和歌筆)立花 大亀(箱書)「夏月」

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「夏月」

来ぬ秋の 比可りを袖に まずみせて のぼれば涼し なつの夜の月
大綱 宗彦:大徳寺四百三十五世、和歌書をよくし茶に親しむ、

又永楽保全の後援者となる。万延元年歿八十九歳

立花 大亀:臨済宗紫野大徳寺塔頭霊山徳禅寺長老如意庵庵主。

平成十七年歿百五歳大阪生

 

三代 早川 尚古斎「水雞笛 花生」には涼やかな 

下野(しもつけ)、釣鐘草、縞葦を。

水雞(くいな)の花生とは、誘い出すために鳴き声に似せて

作られたそうですが、この形が鳥笛の形ににているのでしょうか。

 

寄付には 狩野 常信「高士観瀑図」

表装共々、とても素敵なお軸です。

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「高士観瀑図」

茶杓は 小田 雪窓 宗甫「銘 古渓 竹茶杓

こちらは節の下中央が割れ目があり、まさに渓 の感有り、でした。

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古渓

香合は 元岡 清斎「渓山柳翡翠 蒔絵 香合」

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「渓山柳翡翠 蒔絵 香合」

お棗は 熊谷 秀穂「楓蒔絵 即中斎好 糸目 中棗」

お茶碗は 「楽焼 描分 平茶碗」

梅素(造) 十代 松尾 宗吾(箱書花押)「銘 渋団扇 魚々屋 茶碗」

とても味わいのあるお碗でした。

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銘 渋団扇 魚々屋 茶碗

蓋置は 手塚 桐鳳「仁清写 青楓文 蓋置」

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仁清写 青楓文 蓋置

来月が梅仕事月になりますので、一足早く、

鶴屋八幡 「青梅」を帯谷 宗生「トルコ青釉 鉢」に

鮮やかな色合いながら、涼をよんでくれました。

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主菓子

干菓子は銀座鈴屋の季節限定「梅納豆」を「本漆溜塗 輪花鉢」に。

こちらは甘納豆の予想を裏切る 青梅のかりかり感と酸味で嬉しい

驚きでした。

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干菓子

 来月はお休みで次回は七月となります。

七夕あたりとなりましょうか。

皆様急の暑さにお気をつけください。

 

季春のお茶会

季春のお茶会を開きました。

まもなく去る平成と、春を惜しむお茶会のご報告です。

まずは本床には 真巖 宗乗「花 為誰開」の堂々たるお軸です。

この季節にお茶席によく飾られる禅語ですが、

花は誰のために咲くのでしょうか、何のために咲くのでしょうか。
ありのまま自分の立ち位置にせい一杯の力を出してただ咲いています。
 花のありのままのすがた、天真自爾の妙境に遊ぶ境地を説いています。

 

お花は 菜の花、小判草、花みずきを「南蛮 花入」に。

香合は「隅田川焼 都鳥 香合」

紙釜敷も鳥のたゆとう水のイメージで選んでみました。

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本床

棚は桑小卓です。

「平建水」「板橋 蓋置」若島 孝雄「芽張柳内霞 大棗」そして

南紀 男山焼 牛染付 水指」がぴったりあっていました。

 

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桑小卓


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佐藤 清光「透木釜 海老鐶」

 

奥田宗春(造)小林太玄(筒箱書茶杓花押)「銘 深みどり 茶杓

隅田川焼 都鳥 茶碗」

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都鳥

 

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橋づくし茶碗

五代 宮川香斎のお茶碗は橋に柳の 春の風情を感じて下さい。

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主菓子

「花邑」巌邑堂 。大吟醸のお酒の香りが素晴らしかったです!。

天龍寺青磁 皿」に映えました。

 

「紫野」玉壽軒は 「真塗 四方盆」に。

 中にあの大徳寺納豆が入っています。

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今回の趣向を感じて頂けましたでしょうか?

お軸の花からきて、花筏、橋、川、水鳥への流れ。

来月は新緑を御題に どんなお道具と出合えるでしょうか?

皆様すてきな休日をお過ごし下さいませ。

蓮は 日曜以外は無休で営業しております!

 

 

 

平成最後の釈迦誕生会 お茶会

今年もお釈迦様の誕生会の季節がやって参りました。

桜もちょうど咲き始め、少し華やかな雰囲気となりました。

お軸は毎年お馴染みの「誕生仏」です。

作者、東皐心越は、江戸初期の渡来僧です。

長崎興福寺に入り、水戸光圀に迎られ水戸天徳寺に住まわれ
水戸祇園寺、高崎少林山達磨寺を開山。

詩文・書画・篆刻など中国の文人文化を日本に伝えられ、
古琴は日本の琴楽の中興の祖、篆刻は独立とともに日本篆刻

祖とされています。元禄七年歿 五十八歳 。

床飾りは散華盆に散華 、 青釉天目 真塗天目台 五色豆を。

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あま茶をおかけします。

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散華

寄付には掛け物でなく、お釈迦様にちな様んで真葛 香山の

白磁 象」。白磁のきりっとしたシルエットが美しいです。

 

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白磁の象

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水指・茶杓・濃茶碗・茶器

水指は華やかな「仁清写 柳橋 手桶 水指」仁清 押印。

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「仁清写 柳橋 手桶 水指」

「呉器 茶碗」

江戸初期から釜山に日本注文の茶陶を専門に焼く窯が開かれ、手本のある茶碗の意味で御本茶碗ともいわれています。釜山付近の陶土は赤い斑点の窯変が出ることが多かったため、その斑点も御本と呼ばれました。釜山窯閉鎖後対馬などで焼かれたものを対州御本、不昧の時代に日本に渡った茶碗を新渡御本という。特徴のひとつとして高台内の土のさらい方が独特で、へら目を残さず拭き取ったようになめらかです。

 

「醍醐花見之図 棗」佐久間 芳山 

こちらは陽ノ下でのお花見が浮かびます。

薄茶椀には杉本 貞光(造)立花 大亀(箱書)「如意 信楽 茶碗」

ほんのり桜色ですね。

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「如意 信楽 茶碗」

今回お釜にもご注目を。

誕生会にふさわしいものが揃いました。

「尾上釜」佐藤 浄清

尾上釜は、天明作で、播磨の尾上神社の朝鮮鐘を模って作り、

この名があるといいます。
鐶付は獅噛、共蓋の摘みの形が鐘朝鐘の形をしていて、蓋裏に

「尾上の鐘」の文字が鋳出してあります。
朝鮮鐘は、朝鮮半島で主に統一新羅時代から高麗時代に鋳造

された銅製の鐘の総称で、中国の古銅器甬鐘(ようしょう)

の形式を受け継いだのではないかといわれています。

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尾上釜

炉縁には 前田 南斎(代数不詳)「舎利木 爐縁」

枝や幹の一部分が枯れ、樹皮が剥がれて白色の木質が剥き出し

になります。その部分が、枝で起きると神(ジン)、

幹で起きると舎利(シャリ)と呼ばれることから、

こちらも誕生会にかけて選びました。

前田 南斎は、代々続く江戸指物師です。

伊豆諸島の御蔵島などの桑材で、精緻で品格ある工芸品を作り、

益田鈍翁はじめ多くの茶人・数寄者の後援を受け桑樹匠と云われる

家柄です。

 

 

そして誕生会には欠かせない、インドのラスゴーラ!Rasgulla!

庵主の大好物でもあります。

乳蛋白をレモンや酢、乳清を使って凝固させたチェーナーに、

重しをして水切りしてセモリナ粉を加え団子状にて茹でます。

この時ばかりはカロリーを忘れて頂きます。

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干菓子 花見団子

ところでなぜ五色豆をお供えしたかと申しますと、

昔、お釈迦様がこの世にお生まれになったとき、天の龍が

五色の甘露の雨をふりそそぎ、誕生をお祝いしました。

古事にちなんだ五色のお菓子なのです。



来月はどのようなお道具、趣向となりましょう。

皆様も来月発行の蓮のカタログをご覧頂き、取り合わせを

お使い頂き、どうぞお楽しみ下さいますよう。

 

 

 

 

 

 

木地の炉縁

炉の季節、華やかな蒔絵も素晴らしいですが、木地の炉縁の落ち着きも捨てがたく感じます。

木地といっても、稀少な黒柿から桑、桐、欅など、それぞれの木の特徴が出ていて見飽きることがありません。

空気や人の手に触れると共に、色合いがゆっくり変化していくのも木地ならではですね。

 

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黒柿

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                「時代 桑 炉縁」

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「澤栗 炉縁」

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「古材 炉縁」

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「槐 炉縁」

槐(えんじゅ)・中国では、高官に出世すると庭に植える風習があり、幸福を呼び、

病魔を払い、寿命を延ばす縁起の良い木として古くから親しまれています。

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「涌乾漆 踊桐 炉縁」

次は 平安 浄白 作です。

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「樹木漆絵古材 炉縁」

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「踊桐 松 摺漆 炉縁」

最後に、

江戸指物師として高名な 須田 桑月 「桑 炉縁」

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「桑 炉縁」

 

炉縁ひとつで茶室の雰囲気が変わります。

木地の魅力に浸ってみませんか?

ホームページにもご紹介しておりますが、無料カタログには季節の商品を多数掲載しております。お申し込みお待ちしております。

::: 書画・茶道具・新古美術品の専門店 蓮・慈光美術 :::

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二月 梅観の茶会

二月も末となりましたが、梅観の茶会を開きました。

寄付には「大鳥居揮壕図」高 嵩谷 

江戸の絵師で、英一蝶の門人佐嵩之の門人でした。

鳥居の柱に絵師の名が書かれております。

昔は長旅の記念にこうやってサインでもしたのでしょうか?

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高 嵩谷「大鳥居揮壕図」

本床には「陽春消息平梅香」

「天暁報来山鳥」と対の語となっております。

永平寺七十三世・総持寺独住十六世 熊沢 泰禅の堂々、かつ流れる書が 

初春の空気を届けてくれます。

曹洞宗大学林等歴任され、現代の清僧と呼ばれた方です。

昭和四十三年歿九十四歳愛知生

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二代 保庭 楽入の「信楽 旅枕 花入」に小手毬、出雲大社をさしました。

この方は、初代楽乳・岩城兵衛に師事され、信楽壷窯をおこしました。

梅にちなんで、道真公が遙か遠路旅たたれた際のお気持ち、様子に想いを馳せて

選らんでみました。

 

香合は「染付 辻堂 香合」五代 幹山 伝七

この辻堂というのは、四つ筋(辻)に建つ庵(堂)を連想させ、

道しるべのお堂です。こちらは屋根の上に松葉と木の葉模様があり、

屋根が蓋となっております。

 

「桐地紋 広口窯」は「時代 桑 炉縁」と華やぎを抑えて。

 

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点前座置き合わせ

茶杓は 「銘春一番 煤竹 茶杓」西山 松之助 共箱。

この方は歴史学者東京教育大学名誉教授です。

臨済禅の修業をし、「蔵雲」の道号を授与されました。

平成二十四年歿九十九歳兵庫赤穂生

信楽焼 水指」道平

「大亀老師御筆 雪月花 大棗」

二代 高桑 泉斎(造)立花 大亀(花押・箱書)

 

「萩 茶碗」十代 三輪 休雪 

そしてもう一つは、

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「夢風翁作 椿豊 茶碗」

藤井 達吉 作。

伝統に捕われない斬新なデザインで、日本画、陶芸.七宝・金工・竹工・紙工・漆工・刺繍・染色・書・和歌など工芸のあゆる分野で活躍され、小原和紙工芸を発表し注目された方です。

師も弟子もなく一切の妥協を排し、孤高の芸術家といわれたそうです。

昭和三十九年歿 八十三歳愛知生

 

菓子器は 「鼠志野 鉢」守屋 宏一作に仙太郎の「鶯餅」 を。

緑がよく映えますね。

f:id:renjikoh:20190227162510j:plain干菓子は 「輪花盆」

広島菓子と、小田垣商店「丹波豆しぼり」を。形も愛らしいです。

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来月は何かと慌ただしい月ですが、どのような趣向になりましょうか。

季節の変わり目でもあります。

お大切にお過ごしください。

 

 

顔真卿と拓本

昨日盛況のもと終わりましたが会期わずかとなった日、穏やかな 

小春日和の中、「顔真卿」の書をみに国立博物館へ参りました。

詳細は国立博物館のサイトをぜひご覧下さい。

私ごとですが、書を書いていた母が顔真卿を敬愛し、家には教本

などがあふれ、その名も聞きながら育ちました。

自然と選んでしまう美しく読みやすいフォント明朝体もこの方の

書なくしてはありませんでした。

覚悟していたとはいへ、入館までに70分待ち、さらに今回の目玉

故宮博物館所蔵「祭姪文稿」こちらは館内でさらに80分待ちの

状態でした。

そもそもの書の始まり、甲骨文から、書聖とうたわれた王義之

東晋時代)の拓本、それをもとに華開いた唐時代三名筆家達

虞世南、欧陽詢、褚遂良。

その中の褚遂良の「孔子廟堂碑-唐拓孤本」は唯一現存作品は

日本(三井記念美術館)にあります。

顔真卿「千福寺多寶塔碑」では、まさにお手本となる端正な

筆がみられます。

「顔氏家廟碑」には一族の歴史が刻まれており「自書告身帖」

ではなんと自らの

任命書がしたためられておりました。

さらに時は流れ、顔真卿をもとにより洗練された書が生まれ

ます。

こちらも故宮博物館所蔵、日本初公開、懐素の「自叙帖」は

酒を飲み、流れるままの草書を書いたとされています。

このように書けたらどんなに心地良いでしょう。

 

日本にもその流れは渡り、有名な空海橘逸勢嵯峨天皇

小野道風藤原行成藤原佐理の書も並びます。

唐の書を下地により優美な独自の書風が育まれていったのが

わかります。

藤原佐理の書は大好きですが、残されたものが詫び状が多く

だらしない人、と後世残念な名が残っていたそうです。

 

明時代董其昌の「臨懐素自叙帖巻」にもひきこまれました。

そひて清時代になりますと、北魏の書への傾倒がみられ、

趙之謙「行書五言聯」の様に野趣あふれる書体へ移って

いきます。

あちこちで中国の方々を拝見しましたが、書をなぞるよう

にして魅入る姿に、ああ読めるんだなあ、と羨ましく感じ

つつ、

祭姪文稿はいつか故宮博物館で出会えますようにと祈り

ながら会場を後にいたしました。

 

拓本はいいものですね。

今回の書とはつながりはありませんが、

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新羅慶州奉徳寺 梵鐘撞座 飛天左右 拓本」

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「為往来安全 内海自得健之 拓本」

三寒四温の春到来です。
皆様ご自愛ください。

 

 #書 #拓本 #仏典

東京国立博物館 - 展示 日本の考古・特別展(平成館) 特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」