時雨の茶会

秋の長雨とはいへ、台風での雨の被害が続いています。

皆様が穏やかな日常を、一日も早くとりもどせますようお祈りしております。

時雨というには強い雨の中、今月は侘びの風情漂うお茶会となりました。

寄付には 

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巌谷 小波


「染しためて 紅葉に晴れよ 秋の雨 傘画賛」

著名な童話作家でもありながら洒落た絵を残されており、ファンも多くいらっしゃいます。

本床には 烏丸 光広

「神無月 ふりみふらずみ さだめなき 時雨ぞ冬の 初めなりける」

江戸時代前期の公卿で、正二位権大納言

博学多識で歌道は細川幽斎、書は定家、光悦流を学び能くされました。

寛永十五年歿六十歳

竹籠にいける最後の月となりました。

花は 蓼 水引 ホトトギス 野紺菊 紫式部 藤袴 河原なでしこが

名残惜しく、秋の風情をひきたててくれます。

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本床

 

中村 松通「根来塗 菊形 茶器」

「浜松文 尾垂 富士 釜」

尾垂釜(おだれがま)は、茶の湯釜の形状のひとつで、胴の下部が不規則な波形に欠けて垂れた形の釜です。
尾垂釜は、古芦屋や古天明など、古い釜の下部が腐食して破損したものを、

その部分を打ち欠いて取除き、新しくひと回り小さな底に付け替えたとき、

打ち欠いた個所を不揃いのまま残したところからの形態で、後には始めから

尾垂の形を作っています。

加藤 了三「やつれ 風炉

十二代忠三郎 尾張藩御釜師。

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釜、風炉

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「根来塗 菊形 茶器」

真清水 蔵六「三島 水指」

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真清水 蔵六「三島 水指」

青木 木米「蕎麦釉 茶碗」

工芸で有名ですが、書画も能くされ、味わい有る作品が残っています。

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青木 木米

織部 茶碗」砂張建水、

阪本 曲斎「法隆寺古材 茶杓

 

主菓子は 紀の国屋「たんざく最中」を「三島青磁 菓子鉢」に。

お干菓子は「四国 和三盆」を吹き寄せ風にして、

二代 村瀬 治兵衛「栗 銅鑼鉢」に。

 

来月はいよいよ炉開きとなります。

併せて 蓮のカタログは来月頭にお手元に届きますので、

炉の時期にお使い頂きたいものを多数揃えております。

ご高覧、ご注文をお待ちしております。

 

名月に想う

今年は暑さが長引きましたが、月が殊の外美しく感じられました。

今月は名月に想いをはせてのお茶会です。

お軸は 雅な御題にふさわしい、

有栖川宮 職仁親王「我が妹子が裾野に匂うふじばかま露す結べど綻にけり」

花が咲くことを「綻ぶ」と言いますが、藤袴の場合は、まさに「綻ぶ」という形容がぴったりなのです。「袴」が縁語となって「綻ぶ」という言葉が意図して選ばれています。花が綻ぶのを、袴が綻ぶことに見立てているわけですが、そのような理解をするのは、花の咲く様子からの連想も手伝っているのではないでしょうか。

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本床

二代 池田 瓢阿「唐もの手付 籠花入」

大好きな籠の季節もあとわずか。

たくさんの野の花が引き立ててくれます。

芒 女郎花 野牡丹 みそ萩 秋明菊 蓼 水引草

いつも育てている花を、惜しげもなく美しくいけてくれるひとに感謝をこめて。

香合は 萩井 一丘「 あらしぎ秋草鈴虫蒔絵 一文字 香合」(共箱)

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香合

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内側

寄り付き
福田平八郎 「鈴虫」

大好きな画家です。

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福田平八郎

納冨 鳥雲「萩焼 水指」

茶杓 東山 大山「清月 茶杓
中村 宗悦「井伊宗観好 萩に雁蒔絵 紅溜八角棗」(共箱)

茶杓 東山 大山「清月 茶杓

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水指

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釜 白玉(詳細不詳)「時代 釜」

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唐銅 鬼面風炉

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釜 風炉

二代 宮川 香雲「秋草 蓋置」
隠れてしまうのが惜しい、美しい蓋置です。

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蓋置

茶碗は 大野 瑞峰「萩焼 俵 茶碗」

新米の美味しい時期をまもなく迎えますが、豊作祈願をこめて。

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萩 俵 茶碗

北白川赫赫庵 「粉引半月 茶碗」

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「粉引半月 茶碗」

おまちかねのお菓子ですが、今回は特別版です。

小男鹿本舗冨士屋製「小男鹿」さおしか

その栞より;明治天皇御製
 月もいま のぼらんとする 山の端に たかく聞ゆる 小男鹿のこゑ
 「小男鹿」は、牡の鹿である。「小」は接頭語または美称あるいは小の意味と解されています。
「小男鹿」は、万葉のころから、古のみやびおの人々に愛され、その心を捕らえてきました。しばしば、和歌に歌われ、或るときは句によまれ、雅人の心を慰めてきました。銘菓「小男鹿」は、その様な牡鹿の姿と雅び男のこころをお菓子で物語ったものであります。

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小男鹿

菓子器は 安田 道雄「藁灰釉 盛皿」

憂愁をおびた色合いとなりました。

干菓子は
諸江屋 菊花煎餅
塩芳軒製 古都の明月

菊花煎餅はほのかに生姜の風味がして、形共々とても気に入りました。

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干菓子

来月はいよいよ風炉最後となります。

どんな侘びのお道具が揃うでしょうか。

 

最後になりましたが、

台風の爪痕がまだ残りご不自由を強いられていらっしゃる皆様が、一日も早く元の

生活に戻られますよう、お祈りしております。

 

立礼 茶籠

夏の暑さも少し落ち着いた今日、立礼 茶籠のお茶会を開きました。

今回は立礼で、型よりも久しぶりの再会、楽しみながらお茶を頂けました。

茶籠は江戸時代の古い籠、お道具揃いで、仕覆も時代がかかって、扱いに注意を払いました。

茶籠お道具は 棗は鉄線蒔絵 平棗、振出は 月下松図 染付 土佐光貞画、

江戸後期 土佐派の画家の手によるものです。寛政時代、内裏屏風・障子に揮毫しています。

茶杓は牙 芋頭、茶筅筒は秋草蒔絵でした。

茶籠のお道具は 持ち主の趣向が色濃く表れます。

いいもの、すきなものを少しづつ揃える楽しみがあります。

 

茶籠を運ぶお盆は、本来四角の茶籠に対して丸を求めますが、色合いも風貌も合う、

「鎌倉彫 紅葉四方盆」といたしました。

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時代 茶箱

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茶箱 道具

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茶碗は、濃い茶もお薄も珉平焼 「秋草茶碗」。絵柄がそれぞれ風情がありました。

建水は、鎚目エフゴ建水。

銀仕上 銀瓶を低めの翠釉鉢に灰をいれて瓶掛といたしました。

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秋草茶碗(口金継)

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秋草茶碗

短冊には、下田 歌子(歌)荒木 寛畝(画)

「花さかす かかくすみにも こえぬべし まてとをたねの やまとなでひこ」

なでしこ画賛を。

こちらにお花があるため、あえて添えずにおります。

店の外にはまだ蓮の花と青青とした葉が風にゆれておりました。

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お菓子は今回、新潟で銘菓 新潟百花園「煌星」を村瀬 四郎「不二見焼 籠菓子器」に。オレンジピールの香りが良く、柔らかく甘すぎず美味でした。

新潟横田屋「越のひむろ」を此君亭工房「四極盆」に。

重要無形文化保持者・生野祥雲斎氏工房の作品です。

紅白が映えて美しかったです。


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干菓子

お土産に頂いた新潟百花園「にいがた琥珀」、新潟名物をかたどった干菓子を頂き

ながら、ひとしきり和やかな時間が過ぎていきました。

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お土産「にいがた琥珀

来月はまた新たなお道具ご紹介いたします。

最後になりましたが、

豪雨被害が一日も早くおさまりますことをお祈りしております。

 

 

 

夏の美術館

お盆で帰省されで、台風の影響で大変な想いをされた方もいらしたようですが、

大きな被害が出ずに済んで安堵しています。

いつになく暑い暑い夏ですが、夏休みはいかがお過ごしでしたか?

私達は久しぶりに店主共々 根津美術館へ参りました。

ここは毎々、海外からの方が多く訪れていらして、熱心に見入っていらっしゃいます。

庭園も季節ごとに変化があって、心地良い空間です。

「優しいほとけ、怖いほとけ」というテーマでしたが、菩薩、地蔵、不動明王などの

仏像、絵画、絵巻ものがありました。

「矢田地蔵縁起絵巻」の鬼たちがいいお顔で、脇で眺めるお地蔵様のクールな表情が

対称的で印象に残りました。

仏画や仏像にはそれぞれ約束事があり、表している物や眷属によって読み取るようになっています。

解説はほりさげればいくらでも書けましょうが、わかりやすく頭に入りやすかった

です。

小中学生の夏休みレポートにいいのでは、と感じつつ。

 

この美術館でお気に入りの室が二階の茶室、器コーナーです。

今回は夏ということで、涼を招きつつも格式もあって、という選でしょうか。

惟馨周徳 画 「潑墨山水図」が気に入りました。

 

大好きな籠の季節です。

重要無形文化保持者 生野 祥雲斎

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「紫竹みの虫籠 花入」

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「白竹通筒 花入」

野の花が合いますね。

次回は暑い夏のお茶会ご報告予定です。

七夕のお茶会

七夕のお茶会を開きました。

梅雨と台風などで豪雨が続きます。

九州関西の方々には、どうか被害無く過ぎてくれますようにお祈りしております。

今月は七夕。

大宮八幡で名水御神水を賜り、そのお水でお茶を点てることとなりました。

「多摩の大宮」と云われた武蔵野の地に沸いたため名水となり、今も大宮八幡宮境内の多摩清水社からは御神水が湧き出ています。

朝早くスタッフが汲んできてくれました。

 

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大宮八幡宮

 

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神水

蓮の手水に注ぎ、頂いた短冊を笹に飾ります。

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蓮の手水

 

 

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大宮八幡宮短冊

寄付には今村 紫紅「七夕そよがせ 黒き家並み 画賛」を涼しげな短冊掛に。

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今村 紫紅 画賛短冊

 

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本床には 流れる天の川を想い 玄法の「道」を

傍らには涼しげかつ清い白い山法師、その名も「織姫」

そして添える葉蘭は「天の川」です。

「釣舟花生」は天の川を渡らせ、牽牛、織り姫を会わせててくれましょうか。

 

香合は「かうち(交趾)糸巻 香合」

交趾は、中国南部で生産された陶磁器の一種で、ベトナムのコーチシナ(交趾支那

との貿易で交趾船によりもたらされたことに由来する名称とされています。

 

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本床

西村 道爺 /大西 浄長(折紙)「四方雲龍 釜」「小型 唐銅 鬼面 風炉

蓋置は「唐銅 一閑人」

「木地 釣瓶 水指」が新鮮に映ります。

西村道爺氏は京都三条釜座に住し、表千家七世 如心斎宗左(1705~1751)の頃に活躍した西村家四代釜師です。 原叟時代から如心斎時代の名工とされ、 西村家代々「道や(弥・也・爺)」を名乗った処から、俗に「ててどうや」との呼称があります。

大西 浄長氏は千家十職釜師大西家、十二代長男。

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釜、風炉、水指、蓋置

相上 俊郎「木地 内金 棗」

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相上 俊郎「木地 内金 棗」内側

茶杓は成瀬 宗巨「銘 七夕 茶杓

 

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茶杓 銘 七夕

涼しげな主菓子の器として、益田 芳徳「ぐらすはち」に亀廣永「したたり」を。

こちらは京都の地下水を使った、まさにこの時期こだわりのお菓子です。

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主菓子

干菓子は亀屋良長「七夕」短冊を通す穴まで、きちんとあいております。

振り出しには金平糖を。

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干菓子

いかがでしょうか?

ちょっといつもの七夕とは違った趣向を凝らしてみました。

次回は盛夏のお稽古となります。

皆様ご自愛くださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

お軸の紹介

梅雨を迎え気温の上がり下がりが激しいですが、お変わりございませんでしょうか。

蓮では夏に向けてのカタログ受付が始まっております。

徳川 家達(賛)山名 貫義(画)

「柿本人麿図 久るるかと みれば明ぬるなつのよを あかすとやなく山ほととぎす」

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和歌の部分

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上部の絵

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柿本人麿 図

今月はお茶会は来月始めに開きます。

また書画、お道具をご紹介させて頂きます。

 

#書画#徳川家#山名貫義#和歌山#紀州藩日本画#蓮#掛軸#美術館

 

瀟湘八景に寄せて

瀟湘八景に想いをはせたお茶会を開きました。

「鉄 瀟湘八景 八角風炉・浜松地紋 富士釜」こちらの風炉に描かれている

のが瀟湘八景です。

今回はそれにちなんだお道具や書画を集めてみました。

瀟湘八景とは、中国の山水画の伝統的な画題となっています。

またその八つの名所のことを指します。

瀟湘は湖南省長沙一帯の地域。洞庭湖流入する瀟水と湘江の合流するあたりを瀟湘といい、古より風光明媚な水郷地帯として知られています。

北宋時代の高級官僚・宋迪はこの地に赴任した際に、

この景色を山水図として描いています。

どっしりとした八角風炉とその上の富士釜にも、松原の景が描かれています。

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瀟湘八景 八角 鐵風炉

 

本床には 大綱 宗彦(和歌筆)立花 大亀(箱書)「夏月」

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「夏月」

来ぬ秋の 比可りを袖に まずみせて のぼれば涼し なつの夜の月
大綱 宗彦:大徳寺四百三十五世、和歌書をよくし茶に親しむ、

又永楽保全の後援者となる。万延元年歿八十九歳

立花 大亀:臨済宗紫野大徳寺塔頭霊山徳禅寺長老如意庵庵主。

平成十七年歿百五歳大阪生

 

三代 早川 尚古斎「水雞笛 花生」には涼やかな 

下野(しもつけ)、釣鐘草、縞葦を。

水雞(くいな)の花生とは、誘い出すために鳴き声に似せて

作られたそうですが、この形が鳥笛の形ににているのでしょうか。

 

寄付には 狩野 常信「高士観瀑図」

表装共々、とても素敵なお軸です。

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「高士観瀑図」

茶杓は 小田 雪窓 宗甫「銘 古渓 竹茶杓

こちらは節の下中央が割れ目があり、まさに渓 の感有り、でした。

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古渓

香合は 元岡 清斎「渓山柳翡翠 蒔絵 香合」

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「渓山柳翡翠 蒔絵 香合」

お棗は 熊谷 秀穂「楓蒔絵 即中斎好 糸目 中棗」

お茶碗は 「楽焼 描分 平茶碗」

梅素(造) 十代 松尾 宗吾(箱書花押)「銘 渋団扇 魚々屋 茶碗」

とても味わいのあるお碗でした。

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銘 渋団扇 魚々屋 茶碗

蓋置は 手塚 桐鳳「仁清写 青楓文 蓋置」

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仁清写 青楓文 蓋置

来月が梅仕事月になりますので、一足早く、

鶴屋八幡 「青梅」を帯谷 宗生「トルコ青釉 鉢」に

鮮やかな色合いながら、涼をよんでくれました。

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主菓子

干菓子は銀座鈴屋の季節限定「梅納豆」を「本漆溜塗 輪花鉢」に。

こちらは甘納豆の予想を裏切る 青梅のかりかり感と酸味で嬉しい

驚きでした。

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干菓子

 来月はお休みで次回は七月となります。

七夕あたりとなりましょうか。

皆様急の暑さにお気をつけください。