陶を素材にする彫刻展をみて

3月26日までの展示でしたが、藤原彩人さんの個展「GESTURE」(gallery21yo-j)を
観てきました。
http://gallery21yo-j.com/fujiwara_ayato-17/

藤原さんは陶を素材にする彫刻家で、一貫して「彫刻とは何か」を問う作品を作り続ける一方、
出身地の伝統である益子焼からも強く影響を受けています。

これまでは、焼き物が構造上持つ内側の空洞と、彫刻の醸し出す存在感を具有した印象的な
人物像が中心でしたが、
今回はすくっと伸びた体幹の周囲に空間を構成する新しい展開が前面に出ていました。
身体から生えて空間を形造る構造に“乗せられた”腕はまるで、自動人形のそれの様。
作家は「何のポーズというわけではない」つまり空間構成でしかないと言いますが、
鑑賞者はそこに演奏していたり、ダンスをしていたりといった物語を読み出してしまいます。
「GESTURE」というのは文字通り以上の読み方が出来る展示名のようです。

溢れかえる言葉や記号より、身体のささやかな動きにリアリティを感じるという作家。
現代と「形」「動き」を考える作品は、やはり彫刻を問う一連の思考上にあります。
同時に、物質に幻を投影して物語を読み取る関係は、陶工が土と対話する姿に重なります。

物に幻を投影し物語を読む、と言えばもう一つ、茶会の道具達が思い浮かびます。
床の間に折々の景色を見出し、選られた道具の関係のうちに題を読み取る、と言う具合に。
物自体を愉しむ、それが作り出す空間構成を愉しむ、物語を読んでみる・・・
モノを観るとはかくも面白いことなのだと改めて気付かされる展示でした。

春霞を感じさせる花入 いかがでしょうか。
今井 政之 「線刻弦 花入」