今年もお釈迦様の誕生会の季節がやって参りました。
桜もちょうど咲き始め、少し華やかな雰囲気となりました。
お軸は毎年お馴染みの「誕生仏」です。
作者、東皐心越は、江戸初期の渡来僧です。
長崎興福寺に入り、水戸光圀に迎られ水戸天徳寺に住まわれ
水戸祇園寺、高崎少林山達磨寺を開山。
詩文・書画・篆刻など中国の文人文化を日本に伝えられ、
古琴は日本の琴楽の中興の祖、篆刻は独立とともに日本篆刻の
祖とされています。元禄七年歿 五十八歳 。
床飾りは散華盆に散華 、 青釉天目 真塗天目台 五色豆を。
寄付には掛け物でなく、お釈迦様にちな様んで真葛 香山の
水指は華やかな「仁清写 柳橋 手桶 水指」仁清 押印。
「呉器 茶碗」
江戸初期から釜山に日本注文の茶陶を専門に焼く窯が開かれ、手本のある茶碗の意味で御本茶碗ともいわれています。釜山付近の陶土は赤い斑点の窯変が出ることが多かったため、その斑点も御本と呼ばれました。釜山窯閉鎖後対馬などで焼かれたものを対州御本、不昧の時代に日本に渡った茶碗を新渡御本という。特徴のひとつとして高台内の土のさらい方が独特で、へら目を残さず拭き取ったようになめらかです。
「醍醐花見之図 棗」佐久間 芳山
こちらは陽ノ下でのお花見が浮かびます。
薄茶椀には杉本 貞光(造)立花 大亀(箱書)「如意 信楽 茶碗」
ほんのり桜色ですね。
今回お釜にもご注目を。
誕生会にふさわしいものが揃いました。
「尾上釜」佐藤 浄清
尾上釜は、天明作で、播磨の尾上神社の朝鮮鐘を模って作り、
この名があるといいます。
鐶付は獅噛、共蓋の摘みの形が鐘朝鐘の形をしていて、蓋裏に
「尾上の鐘」の文字が鋳出してあります。
朝鮮鐘は、朝鮮半島で主に統一新羅時代から高麗時代に鋳造
された銅製の鐘の総称で、中国の古銅器甬鐘(ようしょう)
の形式を受け継いだのではないかといわれています。
炉縁には 前田 南斎(代数不詳)「舎利木 爐縁」
枝や幹の一部分が枯れ、樹皮が剥がれて白色の木質が剥き出し
になります。その部分が、枝で起きると神(ジン)、
幹で起きると舎利(シャリ)と呼ばれることから、
こちらも誕生会にかけて選びました。
前田 南斎は、代々続く江戸指物師です。
伊豆諸島の御蔵島などの桑材で、精緻で品格ある工芸品を作り、
益田鈍翁はじめ多くの茶人・数寄者の後援を受け桑樹匠と云われる
家柄です。
そして誕生会には欠かせない、インドのラスゴーラ!Rasgulla!
庵主の大好物でもあります。
乳蛋白をレモンや酢、乳清を使って凝固させたチェーナーに、
重しをして水切りしてセモリナ粉を加え団子状にて茹でます。
この時ばかりはカロリーを忘れて頂きます。
ところでなぜ五色豆をお供えしたかと申しますと、
昔、お釈迦様がこの世にお生まれになったとき、天の龍が
五色の甘露の雨をふりそそぎ、誕生をお祝いしました。
古事にちなんだ五色のお菓子なのです。
来月はどのようなお道具、趣向となりましょう。
皆様も来月発行の蓮のカタログをご覧頂き、取り合わせを
お使い頂き、どうぞお楽しみ下さいますよう。