今年は暑さが長引きましたが、月が殊の外美しく感じられました。
今月は名月に想いをはせてのお茶会です。
お軸は 雅な御題にふさわしい、
有栖川宮 職仁親王「我が妹子が裾野に匂うふじばかま露す結べど綻にけり」
花が咲くことを「綻ぶ」と言いますが、藤袴の場合は、まさに「綻ぶ」という形容がぴったりなのです。「袴」が縁語となって「綻ぶ」という言葉が意図して選ばれています。花が綻ぶのを、袴が綻ぶことに見立てているわけですが、そのような理解をするのは、花の咲く様子からの連想も手伝っているのではないでしょうか。
二代 池田 瓢阿「唐もの手付 籠花入」
大好きな籠の季節もあとわずか。
たくさんの野の花が引き立ててくれます。
芒 女郎花 野牡丹 みそ萩 秋明菊 蓼 水引草
いつも育てている花を、惜しげもなく美しくいけてくれるひとに感謝をこめて。
香合は 萩井 一丘「 あらしぎ秋草鈴虫蒔絵 一文字 香合」(共箱)
寄り付き
福田平八郎 「鈴虫」
大好きな画家です。
納冨 鳥雲「萩焼 水指」
茶杓 東山 大山「清月 茶杓」
中村 宗悦「井伊宗観好 萩に雁蒔絵 紅溜八角棗」(共箱)
釜 白玉(詳細不詳)「時代 釜」
唐銅 鬼面風炉
二代 宮川 香雲「秋草 蓋置」
隠れてしまうのが惜しい、美しい蓋置です。
茶碗は 大野 瑞峰「萩焼 俵 茶碗」
新米の美味しい時期をまもなく迎えますが、豊作祈願をこめて。
北白川赫赫庵 「粉引半月 茶碗」
おまちかねのお菓子ですが、今回は特別版です。
小男鹿本舗冨士屋製「小男鹿」さおしか
その栞より;明治天皇御製
月もいま のぼらんとする 山の端に たかく聞ゆる 小男鹿のこゑ
「小男鹿」は、牡の鹿である。「小」は接頭語または美称あるいは小の意味と解されています。
「小男鹿」は、万葉のころから、古のみやびおの人々に愛され、その心を捕らえてきました。しばしば、和歌に歌われ、或るときは句によまれ、雅人の心を慰めてきました。銘菓「小男鹿」は、その様な牡鹿の姿と雅び男のこころをお菓子で物語ったものであります。
菓子器は 安田 道雄「藁灰釉 盛皿」
憂愁をおびた色合いとなりました。
干菓子は
諸江屋 菊花煎餅
塩芳軒製 古都の明月
菊花煎餅はほのかに生姜の風味がして、形共々とても気に入りました。
来月はいよいよ風炉最後となります。
どんな侘びのお道具が揃うでしょうか。
最後になりましたが、
台風の爪痕がまだ残りご不自由を強いられていらっしゃる皆様が、一日も早く元の
生活に戻られますよう、お祈りしております。