最後に集ったのが昨年となり、久々のお茶会を開きました。
今回はお釈迦様の誕生を祝う仏教行事、誕生会(たんじょうえ)
灌仏会を一同でお祝いをいたしました。
四月八日に各地で開かれますが、
降誕会(ごうたんえ)仏生会(ぶっしょうえ)浴仏会(よくぶつえ)
龍華会(りゅうげえ)花会式(はなえしき)花祭灌仏会(かんぶつえ)
の別名があります。
花祭り というのが身近でしょうか。
灌仏会の「灌」は、「そそぐ」という意味。
この日に寺院を訪れますと、お釈迦さまの像に甘茶を注ぐのを目に
された方もいらっしゃると思います。
このときの像は「誕生仏」と呼ばれるもので、すっくと立った
お釈迦さまが右手で天を指さしています。
「天上天下唯我独尊」
お寺によっては白い象が登場します。
お釈迦様の生母はマーヤー(摩耶)夫人。
摩耶夫人は、釈迦族の王・シュットーダナ(浄飯)の妃ですが
子宝に恵まれませんでした。
ある日、天から白象が降りてきて、自分の右脇から胎内に入る
夢を見て懐妊されたと言われています。
産まれた王子はシッダールタ(悉達多)と名付けられました。
その名には、一切の願いが成就したという意味がありましたが
摩耶夫人は悉達多を産んで七日後に亡くなってしまわれます。
摩耶夫人が見た夢は
「世界中の人々を救う偉大な王子が生まれる」
というお告げでもありました。
仏教国のタイでは、象を神聖化して、中でも白い象は釈迦の
化身とされています。
日本でもこの日は、紙の張り子の象を、お釈迦さまの像を
背中に乗せて、お稚児さんたちと街を行進するところも
あるようです。
蓮では 大理石の白象の親子像を寄り付きに。
軸は 平山郁夫 木版「天女」散華色紙を。
毎春誕生会に本床にかかるお軸は
東皐 心越(とうこう しんえつ)の「誕生仏」です。
俗姓/蔣、名/兆隠のちに興儔、字/心越、号/東皐、別号/樵雲/越道人
江戸初期の渡来僧。長崎興福寺に入り、水戸光圀に迎られ水戸天徳寺に住す。
水戸祇園寺、高崎少林山達磨寺開山。
古琴は日本の琴楽の中興の祖、篆刻は独立とともに日本篆刻の祖と
される。元禄七年歿五十八歳
誕生仏象に、各自甘茶をおかけしてお祝いいたします。
「昭和百萬塔 香合」を添えます。
花は桜の枝を。
釜は 佐藤 浄清「尾上釜」
尾上釜(おのえがま)は、茶の湯釜の形状のひとつで、釣鐘形で
鋳出した釜です。
萩谷 勝房「是和庵 鐶」添。
水戸山崎勝久 弟 勝茂門、慶應四年歿七十余歳
炉縁は「古材 炉縁」
「時代 竹 自在」
薄器はこの時期ならではの 花筏
散った桜の花びらが水面に浮き、連なって流れていく様を指します。
その花びらの動く様子を筏(いかだ)に見立てたといわれます。
また、筏に花の枝などを添えたものや、散った花びらが筏にふり
かかった
ものなども、花筏という言葉で表現されています。
初代 稲井 玉甫「花筏 棗」
明治から昭和初期に活躍した漆芸家。鈴木玉船門。陶器に見える
漆器捜し陶器の白釉を再現した白漆見つけ、
歴代これを得意とす。
大正十三年六趣園に参加など、変塗りや伝統的な蒔絵など
高度な
幅広い技術を持つ。
「火舎(ほや)蓋置」
火舎のついた小さな香炉を蓋置に見立てたものです。
火舎は、火屋・穂屋とも書き、香炉・手焙・火入などの上におおう
蓋のことで、蓋のついた香炉のことを火舎香炉と呼びます。
火舎蓋置は、七種蓋置のうち、最も格の高いものとして扱われ、
主に長板や台子で総飾りをするときに用います。
『源流茶話』に「ほや香炉と申候ハ、いにしへ唐物宝形つくりえ
香炉の蓋を翻し、釜のふた置ニ見たて、袋をかけ、真の具に被定候、
ほやとハ蓋宝形つくりなれは也」、
『茶道筌蹄』に「火屋 ホヤ香爐をかり用ゆ」とあります。
『南方録』に「穂屋 天子四方拝の時、用玉ふ香爐といへり、
さまによりて蓋置に用る時も、殊外賞翫の一ツ物なり、
草庵に用たる例なし、
袋棚以上に用、手前の時、賞翫の置所等秘事口傳」とあります。
茶碗もこの時期ならでは。
杉田 祥平(造)立花 大亀(箱書花押)「色絵仁清桜花画 茶碗」
「呉器 茶碗」
「呉器 堅手 茶碗」
高麗茶碗の一種で、李朝初期から中期にかけて慶尚南道の金海窯で焼かれたと
されています。堅手の名前は、素地や釉や手触りが堅そうなところに由来する
といわれています。
堅手の本手は、大振りの椀なりで、懐が広く、灰白色の半磁器質の素地に、
白がかった淡青色の釉を総掛けしてあります。
堅手茶碗には「古堅手(こかたで)」「雨漏(あまもり)堅手」「鉢の子」
「金海(きんかい)堅手」などがあります。
天女が着て、空中を自由に飛行するといわれる衣ですが、こちらも
インドの伝説が発祥といわれております。
加藤 民吉「尾張焼 瑠璃 手付 水指」
鮮やかな水指です。
吉左衛門景遠の次男、肥前の染付磁法を伝え瀬戸の陶祖と讚えらる、
尾張藩勘定奉行より下付された「楕円に尾張」の銘は享和年間の使用。
この誕生会での主菓子は
インド菓子 ラスゴーラ(Rasgulla)です。
乳蛋白をレモンや酢、乳清を使って凝固させたチェーナー(Chhena)に、
重しをして水切りしてセモリナ粉を加え団子状にて茹でます。
これをラスゴーラ(Rasgulla)と言い、同類にチャムチャム(Cham Cham)
があります。
店主の大好物で、インドでは鉢を抱えて食べたと言われております。
銀のボールに小分けして スプーンですくって頂きます。
取り忘れて頂いてしまいましたので、ネット画像をご参考までに。
干菓子は 高坏 木地菓子器に 京都のミルク金平糖を盛って。
早くも新緑がまぶしいこの頃、
次回も無事集えますよう。