初釜

列島を寒波が包み込む中、無事年を越して新年も早一ヶ月を経て、

無事初釜を迎えることができました。

寄り付きには 吟翁「結び柳」と炭飾りを。

寄付

 

炭飾り

おめでたい 海老、亀、鶴があしらわれています。

唐の故事をもとに、結び柳をお茶の席に最初に柳を

用いたのは千利休とされています。

 

結び柳の由来は「結す」「産す」「生す」

-全て読みは「むす」-が

繋がっていることからと言われています。

新年と旧年を結ぶという意味も込められているそうです。

 

本床には 大綱宗彦のお軸

「壬子人は子日ゐわは 都人はつるの松にいくそえて 

いわつやいわへ けふのななくさ」

大綱宗彦(だいこうそうげん):大徳寺四百三十五世

和歌書をよくし茶に親しむ、又永楽保全の後援者となる。

万延元年歿八十九歳

 

神楽鈴を朱台に供えます。

香合は 「黄瀬戸 福禄寿 香合」

花入れは其の朝に 青竹を庵主が切りました。

店の紅梅と松とで 松竹梅となります。

竹花入は茶杓と共に茶人が手ずから造るものとして

尊重されてきました。

天正十八年の秀吉による小田原攻めの折、

利休が韮山(静岡)の竹を切ったのが流行の初めと

されています。

本床 お軸

本床



炉縁は「末広舟蒔絵黒塗炉縁」岡本陽斎

蒔絵の舟が華やぎを運んでくれます。

 

釜は「瑞雲地紋 肩衝 釜」宝積正一

釜と炉縁

薄器は今年の干支を

「花兎蒔絵中棗」山本 楽堂

薄器

お茶碗はどっしりあたたかみのある 

「銘 暁光赤 志野茶碗」小林 武春

志野 茶碗



「御本 茶碗」

時代を感じさせる塗りの箱と布に大切に包まれています。

 

「高取 掛分建水」折れ松葉 窯印

建水

「唐銅 色絵 突羽根 蓋置」金森 彦兵衛

前田利長の時代より代々続く鋳物師です。

蓋置

茶杓 「銘 吉祥 シミ竹茶杓

塩沢 大定(筒箱書)海野 宗泰(造)

塩沢 大定:大本山南禅寺三三四世臨済宗南禅寺派

第十一代管長 平成二十年歿

海野 宗泰:竹器師。高野宗陵に師事 

昭和四十二年京都生

 

水指 「春慶塗 手桶 水指」

品のある水指で、お席にあたたかみも加わりました。

手桶水指

さて、ここ数年頂けずじまいであった、茶道では初釜の行事には

欠かすことができない茶菓子、花びら餅の登場です。

新年に食べるお祝いのお餅で、平安時代宮中で元旦から三日間、

長寿と延命を願って固いお餅を食べる「歯固めの儀式」に

用いられていた「菱葩餅」が由来とか。

和菓子にごぼうは、一見不思議な取り合わせですが、

押鮎に見立てておかれたもの。土の中にしっかり根を張るので

「家の基礎がしっかりしている」ことや「長寿」を願う意味が

込められていて、おせちのお煮しめなどにも使われている

縁起のいい根菜です。

今木屋さん自らお届けくださいました。

朱塗りの「会津塗本朱 四段重」を縁高に見立て

上に黒文字を重ね おそるおそる席まで運びます。

正客は押し頂き、最下段をずらし、黒文字を差し入れ

上の段を一旦脇に置き、自席分を前に置いてから 

お重を戻し、次のお席に渡します。

縁高と違って蓋が丸みを帯びており、

黒文字を落とさぬよう緊張しつつ頂戴いたしました。

 

お重

花びら餅

餅干菓子は 「松露」中森 製

干菓子盆は 「独楽」

一同健やかに、和やかな初釜となりました。