六本木・森美術館LOVE展記念のアカデミーヒルズでの講演より考えたこと


武者小路 実篤「天に星 地に花 人に愛」http://jikoh.co.jp/?p=10753詳しい情報あります。
実篤86才の筆は、屈託ない朴訥さをもったものですね。

 普段は店の中での事が中心ですが、たまには足を伸ばして
六本木アカデミーヒルズにて, LOVE展 記念シンポジウム
芥川賞作家から脳科学者まで、注目の論客たちが社会現象としての「愛」を考察する「現代にみる愛のかたち」』
を聞いて参りました。

『セッション1 愛がもたらす深い闇 
母娘の葛藤を描いた『乳と卵』で芥川賞を受賞した作家の川上未映子氏が、家族問題におけるカウンセリングの第一人者、
信田さよ子氏とともに、愛のもたらす深い闇―愛という名の下の支配や束縛について語ります。』
川上未映子氏(小説家)信田さよ子氏(臨床心理士)、モデレーター荒木夏美氏

 臨床心理カウンセリングは人間の人生の社会活動における関係性内で生じる問題、個々人における発達、成熟に付与する問題の両面を取り扱う。
カウンセリングに国民健康保険の適応は無い。にも関わらず、深刻な問題やその心身的な後遺症を抱えてカウンセリングに尋ねる女性は跡をたたない。
身体的な疾患も同じかも知れないが、医学的な治療と投薬だけでは健康回復は難しい場合が多い。

 通常、「こころ」という抽象的な要素の問題を扱う場合に、臨床心理という科学的な思考を適応する現場において「愛」という抽象的でもあり、問題解決への論理による問立てを一瞬にして無に帰す力をもつ言葉は、基本的に使うことをタブーとされている。
「あなたのために」という「愛」や過剰なケアは時に人を追い詰める事があり、それらが顕著に日本の「母娘関係」と、関係性の問題に基づく精神的な失調、疾患のうちに現れだした90年代初頭より信田氏は自ら臨床を続け、臨床心理学とフェミニズム理論に基づく分析的な著作を出し続けている。
 信田氏の経験した現実のカウンセリング事例の語りから、川上氏、荒木氏は「個人の観点から出来事が言葉に変換されていく前の段階」の中での、「沢山の表現の種が実は意識の底の方に潜んでいるかの様な、こころの混乱状態」というポテンシャルに満ちた「泥沼」から踏みだし、「新たな自己認識の課題への扉を開く時、あるいは踏みとどまるとき。思考を停止し、停滞を選択し続ける場面」について真剣なまなざしで問いかけ、
彼女自身が、現在行っている文学表現の「フィクション」仮想現実の物語において、登場人物の人間関係と、登場人物個人の精神的な内面への影響を描くことの「ある種の暴力性」についての意見が切実に語られ、人間が体験の記憶を芸術表現の次元にまで昇華する能力の「特権性」に関しての問題など、文章表現について押し広げる為の内省的な議論を重ねていた。そうした思考の格闘のような場面を、自分自身も重ねて行きたいと考えている。
 川上氏が引用したカート・ヴォネガットの言葉を、再び自分で探し当てるつもりでいる。
暦、時間、人の生の発達と成熟の科学的な概念について、それだけではない思想のだだっ広くて一生掛けては回りきれないような野生の思考の世界について、道は長く、時はあっという間に過ぎゆく。

そんな白熱のあと会場から帰る際に、ロビーフロアの硝子張りの展示スペースに、
オキュパイドジャパン田中コレクションによる
陶製の人形と食器のコレクションが有り、それらの陶器に残された集中力に満ちた仕事も興味深いものであった。

引用、参考
http://www.mori.art.museum/contents/love/event.html

::: 書画・茶道具・新古美術品の専門店 蓮・慈光美術 :::