蒔絵の技法と種類

今年も中々楽しむ時間も作れないままに、雨の中に桜が散る季節となりました。
強い風と時期がかぶらずに、東京の桜は例年より持ちが良かったように感じます。
今回は、漆工芸技法の一つである「蒔絵」について紹介したいと思います。
蒔絵は、漆器の表面に漆で絵や文様、文字などを描き、それが乾かないうちに金や銀などの金属粉を「蒔く」ことで器面に定着させる技法であります。
蒔絵作品と技術を店で扱う作品を例にみながら、品物のある項目のみお写真付きでご紹介いたします。


【平蒔絵(ひらまきえ)】
細かなけし粉で文様を描いた上に粉を蒔きつけて漆で固め、その上を磨く技法。

写真は、中村 孝也「大平棗 柳蒔絵」

【研出蒔絵(ときだしまきえ)】
金粉などを蒔きつけた上に漆を塗り、定着し漆が固まったら木炭で研いで下の文様を出す。

【高蒔絵(たかまきえ)】
炭粉を蒔くなどして文様の部分だけを肉上げし、その上に平蒔絵を施して立体感を出す技法。


【肉合蒔絵(ししあいまきえ)】
肉合とは高低のある面に同時に蒔絵を行う意味で、文様に盛り上げの高低をつけ、研出粉を施した技法。

写真は、「時代 桐鳳凰盛蒔絵 文台」


螺鈿(らでん)】
貝殻の真珠層を平らに加工し、文様の形に切って貼る。

写真は、「唐物 螺鈿 唐人遊興図 香炉台」

【平文(ひょうもん)】
金、銀、錫などの厚い板を文様の形に切って貼る。

【金貝(かながい)】
金、銀、錫など薄い板を文様の形に切って貼る。


【切金(きりかね)】
金や銀の薄い板をごく小さな正方形や菱形などに切り刻み、並べて貼る。

写真は、「時代 金青貝入 香合」
こちらは青貝も加えてありますので螺鈿の合わせ技ですね。


【付描(つけがき)】
蒔絵や螺鈿、金貝の上に粘り気の強い漆を使った平蒔絵で線を描く。

写真は、「光琳蒔絵 香盆」

【描割(かきわり)】
線上に漆を塗り残して金粉を蒔くと、金粉がつかない溝ができて、黒く細い線に見える。

ぱきっとした均等な細い線を出すのが難しい、難易度の高い技術です。


【梨子地(なしじ)】
漆を塗った上に大型で薄い金属粉(梨子地)を蒔き、乾燥後、赤みが買った透明の漆(梨子地)を塗って、漆を透かして梨子地粉が見えるように研いだもの。梨の実の表皮に似るのでいう。鎌倉時代に始まる。

写真は、松茂斎「梨子地 草花蒔絵 香盆 壹」

【沃懸地(いかけじ)】
比較的大きな金属粉を密に蒔いた上から漆をかけ、研ぎ出し仕上げたもの。金粉を用いたものは金地・金溜地(きんだみじ)ともよばれる。



蒔絵の詳細な起源は定かではないようですが、正倉院「金銀鈿荘唐大刀」にその起源をうかがい知れるようです。
技術として安定し体系化され始めたのは平安時代がはじまりのようですね。
本日は蓮からの蒔絵作品のご紹介です。


作品名:「時代 螺鈿光琳蒔絵 兎 香合」
サイズ:高2.6×径7
詳細:青貝、鉛、金銀蒔絵使用・状態良(蓋縁極少キレ二ヶ所有)時代箱
商品番号:91306672


作家名:来城斎
作品名:「諌鼓鳥蒔絵 中三(引盃)」
サイズ:(大)高2.5×径12.8
詳細:状態並(小2cm位のキレ一ヶ所有)高台内金泥書銘・塗箱入(箱イタミ少々)
備考:かんこどり=諫鼓とは昔、下民にして君を諌めたい者・又訴願のある者は之を打ち鳴らすよう朝廷の門に備え置いた太鼓。諌めの鼓。諫鼓に鶏が安如としてとまっているのは打ち鳴らす者がないからであり、世が太平であることを表す
商品番号:91307599
肉合蒔絵と金貝で見事な合わせ技です。


作品名:「扇面蒔絵 文箱」
サイズ:高4.9×22.3×8.6
詳細:内梨地・状態並(蓋角二ヶ所ワレ少々)箱無し
商品番号:91409133


作品名:「木地 春草蒔絵 小棗」
サイズ:高6.1×径6.2
詳細:時代有明治頃・状態良(銀ヤケ大、立上り所々キレ少々)味良し・合箱
商品番号:91411062
木目を生かした蒔絵、味わいが良いです。
蕨がかわいい…!


作家名:高崎 秋峰
作品名:「輪島塗蒔絵 扇面流し 大棗」
サイズ:高8.2×径8.1
詳細:真塗内梨地・状態良・共裂・共箱
作家詳細:輪島塗塗師、父高崎泉馬に師事、日芸展会員、輪島六職共進会・日展・全日本工芸展他入選、石川の人
商品番号:91504035


作家名:二代 寺尾 玉峰
作品名:「輪島塗 萩鈴虫蒔絵 平棗」
サイズ:高5.8×径8.6
詳細:内真塗・状態良・高台内金書銘・栞添・共箱
作家詳細:輪島塗加賀蒔絵
商品番号:91504080
蒔絵に、鈴虫は青貝の付描で翅が表現されています。


作品名:「梅椿蒔絵 化粧道具」
サイズ:高7.5×径5.7 cm
詳細:内朱・中子付・状態良(中子裾に5mm程のキレ一ヶ所極少)江戸
商品番号:91410087

その他にも蓮ではたくさんの蒔絵作品をご紹介しております。
http://jikoh.co.jp/?cat=3

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